ライフクリニック
心とからだの相談室(毎日ライフ2001年10月号)
癖になったねんざ
ねんざをした足首の腫れがひかず、ひねって転びやすくなりました。何か予防方法はないでしょうか。
Q:いつだったか忘れましたが、左の足首をねんざし、腫れがなかなか引かないことがありました。今も、踝の辺りが腫れているように見えます。昨年暮れに、何でもない平らな道路で、左足首をひねり、派手に転びました。そして、また最近、同じように平坦な道で転び、足首を痛めました。友人に話すと、「靱帯が伸びてしまったのだから、サポーターをするように」といわれました。夏は暑いので、サポーターではなしに、運動などで伸びた靱帯を強くするなど、繰り返すねんざを予防する方法はないでしょうか。また、今年の春ごろから、左膝が痛むのですが、その痛みも左足首が原因となって体のバランスを崩しているからといいますが、ねんざと関係があるのでしょうか。(45歳、女性、事務職)
A:足関節はねんざの最も多い関節です。ねんざといっても「ピンからキリ」で、「くじいたかな」と思っただけで忘れてしまうものから、痛みや不安定性が続き、「靱帯損傷」と診断されて、手術されるものまで千差万別です。これは、「ねんざ」という言葉が、関節周囲の軟部組織、関節包や靱帯の損傷のすべてを意味する総称だからです。
「ねんざは癖になる」といいます。これは、足関節の外側にある前距腓靱帯や踵腓靱帯が切れて、足関節が不安定になった状態です。ちなみに「靱帯が伸びた」といわれますが、靱帯はゴムのように伸びるわけではなく、切れた靱帯線維の間が瘢痕で埋まり弛むのです。靱帯の線維が全部切れる「完全断裂」から一部が切れる「不全断裂」までいろいろですが、いずれにしてもゴムのように伸び縮みするわけではありません。
一度、靱帯が切れると足を地面に着くときに内返し(足の裏が内側に向く)しやすくなり、そのまま体重をかけると、外側靱帯が再び断裂します。これを繰り返すと、最初は不全断裂であっても完全断裂に移行し、最後には断端が離れてしまいます。
こうなると、いわゆる「踏み違え」をいつも起こすばかりでなく、「危ない」と思っても「踏ん張る」ことができません。この悪循環を繰り返すと、ねんざが「癖」になるばかりでなく、足を着くときに「不安感」を覚えるようになります。
足関節の靱帯損傷は、外果(前距腓靱帯、踵腓靱帯)、外果の少し前下方(2分靱帯)と内果(三角靱帯)の3ヵ所に起こります。外側が多いのですが、二分靱帯の損傷はあまり障害を残しません。
しかし、同じねんざでも外果の前下縁に圧痛があれば要注意で、少なくとも3週間は安静にしなければなりません。疼痛、圧痛、腫脹、内出血が著明なら、ギプス固定が必要です。一度、瘢痕組織で埋まってしまうと靱帯の緩みは治らないので、初期の安静と固定が重要です。とくに初回のねんざであればなおさらです。サポーター、テーピング、固定装具、ギプスの順に固定力が強くなります。
不幸にして靱帯を弛ませてしまった場合には、ねんざを繰り返さないように注意するしかありません。サポーターやテーピングが有効ですが、十分とはいえません。
靴が非常に大切で、ハイヒール、とくに細いヒールは禁物です。木のサンダルでねんざする人が多いことからわかるように、後ろのストラップがなく踵が浮いてしまうミュールもいけません。底のしっかりしたヒールの広い安定した靴を選ぶことが重要で、バスケットシューズのように足首を固定する短靴は装具の代用にもなります。
靱帯は鍛えることができません。しかし、筋肉は関節を支え靱帯を補助するので、下腿の筋力、とくに腓骨筋を鍛えることは有効です。足関節の外反運動、つまり足の裏を外に向ける運動をするとよいでしょう。
また、ねんざをしそうになったとき、体勢を変えて体重がかからないようにする俊敏性を養うことも大切です。これはとくにスポーツをするのに重要で、足で板を水平に維持しながらボールを動かす運動が有効です。
なお、左膝の痛みについてですが、中年以降で下肢の予備能力が落ちていると、反対側の下肢に負担がかかり、結果として反対側の膝が痛むことはあります。しかし、同じ側の膝が痛む場合には、足関節のねんざ時に膝も損傷していることはあっても、足関節のねんざと直接の関係はないようです。