あなたの足は健康ですか?−−−外反母趾を予防するには
歩くことで健康がつくられるといいますが、
足にトラブルがあっては、歩くこともままなりません。
今回は、足のトラブルの中でも
女性に多くみられる外反母趾にスポットをあて、
外反母趾にならないための工夫を紹介しましょう。
ハイヒールや小さな靴を履く生活習慣が最大の原因
外反母趾は,足の親指が小指のほうへ曲がり、反対に親指の付け根の関節部分が外側に突出していくもので、圧倒的に女性に多い病気です。
なぜ、こうした足の変形が起るのでしょうか。
「外反母趾になる原因は,遺伝やリウマチなどの病気による変形も考えられますが、最も大きな要因となるのが、靴です。女性に外反母趾が多いのは、ハイヒールや小さな靴を履く人が多いことと、男性よりも関節がやわらかいため、靴の圧迫による変形に弱いからです」と、慶應義塾大学医学部整形外科の井口先生。
女性は、自分の足に合った靴というよりもファッション性を優先しがちで、痛くても我慢してハイヒールを履いたり、少しでも足がきれいに見えるように幅の狭い靴や小さい靴を選ぶ傾向が強いようです。
自分の足に合わない靴を履くと、足はどんな状態になるのか、左上のレントゲン写真を見てください。ヒールは高くないものの甲部を深くカットしたパンプスになると少し圧迫されます。それがハイヒールになると、関節が変形しています。
外反母趾は早期予防が大切
外反母趾を防ぐには「ハイヒールを履かない」「きつい靴を履かない」「小さい靴を履かない」-----これ以外にないと井口先生は断言します。
「人間の体は、基本的にかかとを上げて歩くようにはなっていません。ふつうに立っているときは、かかとに5割以上の力が加わって、足の親指には3〜4割ぐらい、小指のほうに1〜2割ぐらいかかるような構造になっています。ハイヒールはそれを逆転させているので、足の先に負担がかかってきます。足によいわけがありません」(井口先生)。
よく病気は早期発見が大切といいますが、外反母趾に限っては早期予防こそが重要だといいます。外反母趾は、一度なってしまったら進行するか、もしくは現状維持で、完治はしないからです。
「問題なのは、もともと外反母趾になりやすい因子を持っている人(祖母も母親も外反母趾だという人や、骨格や関節などが外反母趾になりやすい人)が、足に合わない靴を我慢して履きつづけて外反母趾になった場合、ハイヒールを履くのをやめても、変形が進行していくことです。こうした人は、一度変形してしまうと、痛みがなくても長期的に病状が進行します。ある程度変形してしまうと、指を曲げる筋肉が体重をかけて歩くたびに、親指を小指のほうへ曲げるように働いていくからです。40、50歳を過ぎたころから足の変形がひどくなり、痛みを訴えて整形外科を訪れるケースが多くあります。こうならないためにも、若いときから足に負担をかけない靴選びをして予防をすることが大切です。
予防ということでは、最近、外反母趾を防いだり、足の痛みをとるいろいろなグッズが出回っています。しかし、グッズに頼って、ハイヒールや小さな靴を履き続けているのでは、何もなりません。これを誤解してほしくないですね」(井口先生)
もちろん、早期に外反母趾に気づいて対処することも大切です。外反母趾になる因子をあまり持っていない人なら、若いときに無理な靴を履いて外反母趾になっても、ハイヒールや小さな靴を履かなくなれば、足の変形はそこでストップします。
自分の足を真上から見て下記の自己診断チェックをしてください。異常に変形していたり、靴を履いていると足が痛いという人は、整形外科で診察してもらいましょう。
自分の足をチェック!(井口 傑作成)
次のうち、2つ以上の症状があったり、1つでも症状が強かったりする人は、整形外科を受診しましょう。
生活に支障がある人は手術という方法もある
外反母趾の治療は、どんなことが行われるのでしょう。
「治療が必要な人というのは、指が何度曲がっているからではなく、靴を履いて痛いなど、生活に支障がある人です。変形自体が問題ではなく、変形によって、立つ、歩く、走るということが障害されるのが問題です。足の形が変形していても、痛くないし、何とか履ける靴もあるし、生活に支障がないなら治療の必要はありません。その人の症状や生活支障にもよりますが、まずはハイヒールを履かない指導、そして足に合った靴選びの指導をします。手術は、進行がひどくて歩けない、職業上、どうしても治したいという患者さんの場合で、そのときもよく話し合って決めます」(井口先生)。
手術をしても、足に合わない小さい靴を履けば、元に戻ってしまうので、手術後の靴とのつきあい方はとても大切です。予防そして治療、手術後でもいちばん重要なのは、自分に合った靴選びです。容易なことではありませんが、健康のためにも真剣に探してほしいと井口先生はいいます。先生が、治療の際に指導する靴選びのポイントを下記にあげてみました。参考にしてください。
仕事上、どうしてもハイヒールを履かなくてはいけない人は、仕事以外の時間は履かない。また足に負担をかけない靴を選ぶなど、工夫しましょう。
痛い靴を履き続けることは、外反母趾になるのはもちろん、姿勢が悪くなるので、腰痛や肩こり、頭痛などを引き起こすことがあります。
足の健康が体の健康をつくるといっても過言ではありません。靴を履く生活習慣を見直して、外反母趾の予防に努めましょう。
足に合う靴選びのポイント
外反母趾で足が痛くなってしまった場合は、次のポイントを加えて選ぶとよい。
靴を履く生活で気をつけること