外反母趾の悪化を防ぐ(すこやかファミリー2001.11 vol.465)
「外反母趾」は、その名のとおり、足の親ゆび(母趾)が小ゆびのほうに曲がる(外反する)病気です。「幅広の靴や、装具で進行を止められる」といわれますが、方法を間違うと逆効果。この病気に詳しい井口傑先生に、予防法を中心に伺いました。
「痛ーい、外反母趾よね。幅広の靴にしなきゃダメ?」
Q:「狭い靴」が原因ですよね?
A:性別や遺伝的体質にも原因が
足の親ゆびが小ゆび側に曲がって親ゆびのつけ根が出っ張り、靴にあったて痛い・・・・・これが外反母趾の代表的な症状です。ハイヒールやパンプスなど先の細い靴で歩くことで、体重の重みが足先にかかり、ゆびが曲がるのが、原因の一つです。
外反母趾は女性に圧倒的に多い病気です。女性は男性より関節がやわらかく足ゆびの筋肉が弱いため、靴の影響を受けやすいからです。また、母親もおばあちゃんも外反母趾、という女性がいますが、これは遺伝的関節がやわらかいためと考えられ、細い靴を履く前の12から18歳ごろから、外反母趾になる人もいます。
Q:靴を履かなければ治る?
A:進行期は裸足で歩いても悪化
外反母趾は、「可逆期」(初期の段階で、筋肉や靱帯の力で元の位置にゆびが戻る)→「拘縮期」(靱帯などが縮んで手で動かしても元の位置に戻らない)→「進行期」(曲がりがひどくなり、靴を履かずに歩いてもゆびが曲がってきて痛む)→「終末期」(親ゆびが第二趾の下にもぐり、脱臼したりする)と進行します。
X線写真で外反母趾が15度以上であれば外反母趾と診断されますが、年齢も考慮して重症度の診断や治療方針を決定します(たとえば、30歳前後で外反母趾角が25〜30度なら、靴を履かなくても進行する可能性が高い、など)。
なお、自分でもおおまかな外反母趾角を計測できます。
Q:じゃあ進行は防げないの?
A:初期なら正しい靴選びで防げる
外反母趾は、ある程度まで進行すると、靴を履かなくても悪化することが多いので、初期のうちに進行を止めることが大切です。もっとも重要なのは、正しい靴選びです。
ただし、幅の広すぎる靴は、足に備わっているタテのアーチがつぶれたり(扁平足)、ヨコのアーチがつぶれ(開張足)、外反母趾の出っ張りが靴にあたるようになって痛んだり、悪化のもとです。外反母趾がないものとしてピッタリ合う靴を選び、あたる部分をシューストレッチャーやシュースプレッダーなどで広げてもらうのが基本です。あたる部分が痛むときはパッドやスポンジなどを利用するとよいでしょう。
親ゆびか第2趾の部分が一番長く、つま先部分は足ゆびが自由に動かせるスペースがある、というのも靴のチェックポイントです。外反母趾についての知識が豊富な靴屋さんで購入することが大切です。
Q:装具もいろいろ出ているけど・・・
A:簡単なセパレーターがおすすめ
靴選び以外の進行予防の方法としては、矯正用装具の使用や体操があります。矯正用の装具で、おすすめなのは親ゆびと第2趾の間にはさむ「セパレーター」というもの。いろいろ市販されていますが、汚れることを考え、使い捨てできるよう、ガーゼを折って使うのもよいでしょう。これは靴の中でも使用がすすめられます。セパレーターを使えるくらい、ゆび先にゆとりのある靴を選ぶことが大切といえます。
夜間用の、バネや板に足をくくりつける装具は、まだ初期の人(可逆期や拘縮期の早期)や、遺伝を背景とする若い人ほど効果があります。
外反母趾の人向けの体操もあります(ホーマン体操、タオル寄せ運動)。靴ほどの効果はなく、進行を遅らせる程度といえますが、若い人には効果が大きく、おすすめできます。
「装具や体操の前に靴選び。正しい知識で選びましょう」
*手術が必要なのは・・・
靴を履かなくても痛くて歩けないとき、どんな靴を履いても痛いときなどは、手術の対象となります。手術法はいくつかありますが、いずれも中足骨を切る手術で、4〜10日間くらい入院が必要となります。 |